キャリブレーションブロックの設計と加工
視野を広げて視覚的な死角を回避するために、同じステーションで複数台のインラインプロファイル測定器を使用して対象物をスキャンすることがあります。この場合、複数台の測定器をキャリブレーションする際、正確性と精度を確保するために測定器同士の位置関係に応じてキャリブレーションブロックを設計しなければなりません。
ここではキャリブレーションブロックの特徴や測定器の位置関係を紹介したうえ、キャリブレーションブロックの設計方法を説明します。
キャリブレーションブロックの設計
キャリブレーションブロックを作成する時、現場の条件に合わせて寸法を適切に調整することができます。 |
錐台寸法の決定
錐台寸法には、ベース上面辺長(L1)とベース底面辺長(L2)、高さ(h)があります。特徴面を認識できるように、錐台の側面がベースの上面・底面の角度はそれぞれ 135°と 45°になるようにしてください。
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以下のように錐台の寸法を決定します。
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ベース底面辺長(L2)
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測定器の測定範囲を確認します。
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基準距離にある X 軸測定範囲の値に 70% を掛けて切り捨てた値が下底の辺の長さとなります。
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ベース上面辺長(L1)
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ベース底面辺長(L2)の 3 分の 1(a とする)とベース上面辺長の 2 分の 1(b とする)を計算します。
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ベース上面辺長を a~b の範囲内にし、現場の要求に合わせて値を決定してください。
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高さ(h)
高さ(h) = 1/2 (ベース底面辺長 - ベース上面辺長)
測定器の型式によって異なる寸法を推奨します。以下に示します。
型式 | ベース上面辺長(mm) | ベース底面辺長(mm) | 高さ(mm) |
---|---|---|---|
LNX-7530、LNX-8030 |
10 |
24 |
7 |
LNX-7580、LNX-8080 |
30 |
60 |
15 |
LNX-75150 |
50 |
100 |
25 |
LNX-75300、LNX-8300 |
106 |
212 |
53 |
ベース寸法の計算
キャリブレーションブロックの形状は、測定器同士の配置方法によって決定されます。ここでは並列、対向、対面とその他のリング状レイアウトに必要なベース寸法のパラメータを説明します。
並列、対向、対面
複数台の測定器を使用するシーンと必要なベース寸法は以下に示します。
シーン | 並列 | 対向 | 対面 | |
---|---|---|---|---|
説明 |
測定器を X 方向に沿って平行に配置し、X 方向の測定範囲を広げる |
Y 方向に沿って互いに反対側に配置し、死角を回避して対象物表面のデータを完全に取得する |
それぞれ対象物の上・下に配置し、死角を回避して同時に上・下表面のデータを取得する |
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説明 |
最大 4 台の測定器が使用可能 |
測定器間の距離が短い時に 1つの錐台を使用してもいい |
特別なリング状レイアウトとして見られる |
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イメージ図 |
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ベース寸法 |
並進距離(d)
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エッジ幅(w)
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ベース寸法の説明・決定方法は以下のようです。
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並進距離(d):上図にある隣接する 2つの錐台の中心線の距離。
測定のニーズに応じて測定器の位置を確認し、それらの視野に対象物表面が収まる時の測定器間距離が、並進距離になります。
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エッジ幅(w):錐台の底面エッジとキャリブレーションブロックのベースエッジの距離。
エッジ幅を錐台底面辺長(L2)の半分以上にしてください。
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ベース厚さ(t):2mm 以上にしてください。
その他のリング状レイアウト
測定器をいかなる角度で配置し、高品質な表面データを取得します。このようなシーンでは、より形状の複雑で、CAD などのツールを使用するキャリブレーションブロック設計が必要になります。ここでは 4 台の測定器を使用し、隣接する測定器を約 90°の角度で配置するシーンを例としてベースのサイズを決定する方法を説明します。
以下の手順でベースのサイズを計算します。
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対象物を囲むように測定器を配置し、X方向の測定範囲が対象物表面をカバーし、できる限り対象物が測定器に近づくようにします。
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赤い線:NEAR 側の X 軸測定範囲
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青い線:基準距離の X 軸測定範囲
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基準距離の位置で長さが X 軸測定範囲の線(青い線)を引きます。それぞれの中間点は P1、P2、P3、P4 となり、垂直中央線(緑の線)を引きます。4 本の中央線が四角形を形成します。四角形の幾何学中心を点 C とします。
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線分 CP1、CP2、CP3、CP4 でもっとも長いものを半径として円を描きます。この円がブロックベースの内接円となります。例では、もっとも長い線分は CP1 です。
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なので CP1 を点 C を中心に時計回りに 90°、180°、270°回転させてそれぞれ CP2'、CP3'、CP4' を取得します。それぞれ点 P1、P2'、P3'、P4' を通る円 C への接線を描きます。4 本の接線によって形成される正方形が円 C の外接正方形です。この正方形がブロックのベースになります。
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計算された錐台の寸法通りにベースの上で錐台を描き、ベース底面の中心点が各辺の中心点(P1、P2'、P3'、P4')に合わせます。
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Mech-MSR を使用してキャリブレーションを実行する場合に以下のデータが必要です。
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回転半径(r):錐台の中心点(C1、錐台上面・底面中心を結ぶ線の中間点)とベース内接円の円心(C)の距離。
回転半径 = 1/2 錐台高さ(h) + ベース内接円の半径(CP1)
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回転角度(α):隣接する錐台中心線の角度。
ブロックの形状が複雑な場合に、製図ツールなどを使用して回転半径と角度を測定してください。
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プロセスと精度の要件
キャリブレーションの精度を確保するために、以下の要件を満たしてください。
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キャリブレーション ブロックの表面を黒色酸化処理し、120 メッシュのサンドブラスト処理を施します。
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現場のニーズに応じてブロックに取付穴を開きます。
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いずれの辺や角に対しても面取り加工を施さないでください。
型式によって使用するキャリブレーションブロックの推奨精度は以下に示します。
型式 | 長さ寸法加工公差(mm) | ブロック表面平面度公差(mm) |
---|---|---|
LNX-7530、LNX-8030 |
±0.005 |
0.005 |
LNX-7580、LNX-8080 |
±0.01 |
0.01 |
LNX-75150 |
±0.025 |
0.025 |
LNX-75300、LNX-8300 |
±0.05 |
0.05 |